山水路考

本の記録です。

『なんで洞窟に壁画を描いたの? 美術のはじまりを探る旅』

なんで洞窟に壁画を描いたの?―美術のはじまりを探る旅 (13歳からの考古学) 作者:五十嵐 ジャンヌ 新泉社 Amazon 多読ジムシーズン09で、千夜千冊エディション『全然アート』を読む。一番、注意のカーソルが動いたのが、古代の洞窟壁画である。ネアンデルター…

『鹿男あをによし』万城目学

奈良が舞台なので読む。 ドラマ化もされていて、劇中で出てきた鹿ロボットが市の観光案内所に置かれていた時から気になっていた。 なるほど、坊ちゃんと奈良とファンタジーを組み合わせるとこうなる! ほぼ前知識無し、後半は結末が気になって一気読み。 キ…

『行為の哲学』有福孝岳

学生時代、道元を読むゼミでお世話になった有福先生の本を、閉店間近の古書店で見つけ、買う。 西洋哲学を“行為’’をキーワードに概観する本。 『行為の哲学』有福孝岳,情況出版 目次 行為とは何か 行為の歴史性 倫理とはなにか 実践哲学の復権 支配の基礎と…

『静かな大地』池澤夏樹著

静かな大地 (朝日文庫 い 38-5) 作者:池澤 夏樹 朝日新聞社 Amazon 明治から昭和初期までの北海道史を下敷きにした大河小説。 ひきこまれる。 2日半で読み終える。

『チョウはなぜ飛ぶか』日高敏隆

1975年刊行の本。 日高敏隆さんによる、アゲハチョウの行動のナゾについての仮説→実験→検証の軌跡が、いきいきと叙述されている。 なぜアゲハチョウは決まった道を通るのか。 オスはどうやってメスを見つけるのか。 成功した研究ではなく、まだ未知が残って…

「開国」とは、国内ルールを棄てて国際ルールで生きていくと決めること? 『日本の失敗』松本健一

8月。戦時中に生まれてたらぜったい軍国少女になってただろうなーと思います。田辺聖子さんのエッセイを読んで、ハッとしたことがあります。ようやく読んだ松本健一さんの本、終章近くに坂口安吾が出てきます。法隆寺とか桂離宮に日本の美が宿っているので…

柳田國男を読み、図解する2日間/『遠野物語・山の人生』

遠野物語・山の人生 (岩波文庫) 作者:柳田 国男 岩波書店 Amazon 2021年度前半の輪読座は柳田國男。 月に2日間、柳田國男を集中して読み、図解する。これぐらいしないとなかなか読めない巨大な人物だということが読むプロセスでわかってきた。 民俗学者、方…

中国の面影。『霊山』

霊山 作者:高行健 集英社 Amazon ノーベル文学賞作家でありながら、一時期母国・中国では発禁になっていた高行健(ガオ・シンヂェン)の長編小説。 難解と前評判で聞いていたが、私にとっては心地よい読中感覚を感じる小説だった。 村上春樹にどこか似ている…

可笑しくてやがて凄し。『西南シルクロードは密林に消える』(高野秀行)

西南シルクロードは密林に消える (講談社文庫) 作者:高野秀行 講談社 Amazon 1日で一気読み。 著者は早稲田大学探検部卒業。若き日に立てた志、 「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを 面白おかしく書く」というモットーを全うした紀…

『虚数の情緒』吉田武

数学ブーム。この本もおもしろい。 第二部1章自然数 数の始まり 途中まで読む。 おもしろいところはついつい子どもにしゃべる。 虚数の情緒―中学生からの全方位独学法 作者:吉田 武 東海大学出版会 Amazon

『数学であそぼ。』絹田村子

なぜか空前の数学の本ブームが到来している。 『数学であそぼ。』は、神童と言われて京都の「吉田大学」に入ったものの一日目にして数学の授業のわからなさに、2年間キャンパスに足を踏み入れることができなくなった主人公が、卒業を目指して数学の道を歩き…

『まんが親』吉田戦車

20年ぶりに吉田戦車のマンガを読んでみた。 高校の時に脳天をぶち割られるほどショックを受けた。特に好きで記憶に残ってるのが、みっちゃんのママシリーズで、私の理想?のかあさん像のモデルの一部になっている。 まんが親(1) (ビッグコミックススペシ…

『星と伝説』野尻抱影

星と伝説 (偕成社文庫) 作者:野尻 抱影 偕成社 Amazon 見た目は少し渋いけど、子どもから小1から小2にかけて何度も「読んで」とリクエストのあった本。世界各国の星の伝説が収められている。 野尻抱影翁の文章は流れるようで、何度音読しても飽きない。 織…

「+」はいつ生まれた?

『算数なるほど大図鑑』(ナツメ社) 最近、小2長女にリクエストされるまま、一緒に少しずつ読んでいる。 「+」や「ー」や「×」や「÷」はいつ生まれた? こういうことを最初に教えて欲しかったな~と思うので、今、そうしている。 諸説あるのだろうが、こ…

『せいめいのれきし改訂版』

せいめいのれきし 改訂版 作者:バージニア・リー・バートン 岩波書店 Amazon ようやく改訂版を買う。 長女がエンピツを持って「ちがうところ探し」をしながら読む。 一番大きな変化は「恐竜」というワードが出てくること。 最初の版では「ダイノサウル」とな…

『眺めのいい部屋』E.M.フォースター

眺めのいい部屋 (ちくま文庫) 作者:E.M. Forster 筑摩書房 Amazon 1908年刊行。ザ・長編小説のおもしろさ、久々に一気読み。バージニア・ウルフなどと交友したいたのか。翻訳者による解説で、主人公たちのその後、第一次世界大戦、第二次世界大戦をどう生き…

『むかしの山旅』

『草枕』(夏目漱石/新潮文庫)と『文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの(上・下)』(ジャレド・ダイアモンド著・楡井浩一訳/草思社文庫)に何をとりあわせて3冊にするか。 多読ジム冊匠の「おみくじ」で出てきたのが『むかしの山旅』。 芥川龍之介、…

『落語哲学』のレスペクト力

落語と哲学をクロスさせて語った本。 こんなに著者が心躍る気持ちで書いている本を久々に読んだ。 「哲学で天才といえるのはヴィトゲンシュタインとニーチェである」という序文で始まる。中に出てくる本の引用を見ても、相当に幅広く読んでいるということが…

『草枕』と『文明崩壊』の併せ読み。 おそろしく響き合っている。 小学生の時、文明と文化は「対」のように習ったけど、そんなに単純な関係ではないということが見えてくる。 文明は人が生きるための装置、システムだが、人を殺すこともある。 逆に文化が、…

桜散るニュース、ビーズを一つ踏む

古本、届く。 定価よりもとても高くてシミだらけで、鉛筆のマーキングがいっぱいあって、しかも1986年のカード型カレンダーが挟まっていたが、買ってよかった。 少し干して匂いを取ろう。 カード型カレンダーのフォントがゴナで、時代がよみがえる。なぜDTP…

この珈琲はいずこより来るドミニカ共和国から来る

本についての雑談会で、珈琲がのみたくなる本は? という話題が出た。 寺田寅彦がまっさきに思い浮かぶ。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ やはり人造でもマーブルか、乳色硝子の卓子の上に銀器が光ってい て、一輪のカーネー…

春の夜更かしは薄明に追い立てられる

グレゴリー・ベイトソンの『精神の生態学』、やっと読み始める。 序文は娘のメアリー・キャサリン・ベイトソン。ずっとグレゴリー・ベイトソンの会話相手役だったという。「世に万円している種類の知の外側に踏み出て、問題を問いつめようとする者には、純真…

多読ジム シーズン05ブッククエストで読んだ本

多読ジム https://es.isis.ne.jp/gym 星戀 (中公文庫) 作者:野尻 抱影,山口 誓子 発売日: 2017/07/21 メディア: 文庫

思うさま蜜柑啄むメジロかな(31)

小1の娘「あのね、今日学校で習ったんだけど、ひらがなより漢字のほうが先に生まれたんだって。カタカナはひらがなより後なんだって」。そうなのだ。 ・・ イシス編集学校輪読座「白川静を読む」、ようやくキャッチアップする。 最初に、バジラこと高橋秀元…

メジロ待つ輪切り蜜柑のあたたかき(30)

ホーソーンの『緋文字』。 20年ほど前に新潮社が出した本で読んだ。今回、岩波文庫版で読んでいるが、おもしろくてページをめくる手がとまらない。ただ、主人公の名前が「ヘスタ・プリンヌ」となっているのがちょっと違和感。姓は「プリン」のほうが個人的に…

金色に染まる小さき人と鹿(29)

夕方、若草山に登る。上るにつれて光が金色を増す。一重目から奈良を見はるかすと、あわく霞み、野のあちこちから煙が立ち上っている。万葉集の歌を思い出す。よく見ると炊飯の煙ではなく、野焼きであった。長男が望遠レンズで自分が住んでいるマンションを…

春泥を踏みて駅舎を見あぐ朝(28)

歌仙巻き、偶然、挙句にあたる。 季節は「三春」か「晩春」。最も好きな季語は…歳時記をめくりながら「春泥」だと気づく。 春泥を「地」に、何をターゲットにし、どんなプロフィールをあらわすか。 連想をひろげるために岡潔の『春宵十話』を読み返す。 「た…

剪定の枝に冬毛の猫丸し(27)

小1の長女が小学校の図書室で毎日のように本を借りてくる。 漫画の「ひみつ」をひとしきり借り終わった後、きらきらした表紙にくるまれた過去の名作本を借りてくるようになった。 『リジ―の結婚』? ラノベ風の表紙。結婚って…早すぎるやん。一瞬目をそらし…

桜の紅葉散り始めたり空青し(26)

『方法文学』(松岡正剛、千夜千冊エディション)レジメづくりのため、『ねじの回転』(ヘンリー・ジェイムズ)を読む。 19世紀の小説なのにすらすら読める。モダンに片足を突っ込んでいる? 全体にとても映像的。 終盤、主人公の女の子の表情の変化描写が凄…

夕暮れや三角屋根に四角屋根(25)

夕方、長男、長女と一緒に本屋さんに定期購読している雑誌『子供の科学』と『星ナビ』を取りに行く。 帰り道は西むき。 「いい感じのトワイライト」とカメラを取り出して撮る。 商店街の電灯の形がなかなかいいことに気づく。 家に近づくにつれどんどん暗く…