『なんで洞窟に壁画を描いたの? 美術のはじまりを探る旅』
『鹿男あをによし』万城目学
『チョウはなぜ飛ぶか』日高敏隆
1975年刊行の本。
日高敏隆さんによる、アゲハチョウの行動のナゾについての仮説→実験→検証の軌跡が、いきいきと叙述されている。
なぜアゲハチョウは決まった道を通るのか。
オスはどうやってメスを見つけるのか。
成功した研究ではなく、まだ未知が残っていて試行錯誤を続けている題材を書きたかったとあとがきにある。
めちゃくちゃおもしろくて、子どもたちに時々音読や要約をして共有しながら読みおえた。
理科の教科書が苦手な人にこそおすすめです。
「開国」とは、国内ルールを棄てて国際ルールで生きていくと決めること? 『日本の失敗』松本健一
8月。戦時中に生まれてたらぜったい軍国少女になってただろうなーと思います。
田辺聖子さんのエッセイを読んで、ハッとしたことがあります。
ようやく読んだ松本健一さんの本、終章近くに坂口安吾が出てきます。
法隆寺とか桂離宮に日本の美が宿っているのではない。
生きよ、堕ちよ。
「道徳」や「正義」こそがもっとも激烈な戦争を生む。
引用1:アメリカがヨーロッパによって文明国とよばれるようにな
ったのは、一八九八年(明治三十一年)の米西戦争に勝ち、
スペイン領だったフィリピン、グアム、プエルトリコを獲
得したときのことだった。
引用2:日本がヨーロッパによって文明国とよばれるようになった
のも、一九〇四-〇五年(明治三十七年―三十八年)の日
露戦争に辛うじて勝ち、南樺太を獲得し、韓国の保護権や
遼東の租借権を手に入れてからだった。
引用3:むしろ、そのヨーロッパの力(帝国主義)のまえに屈服し
てしまう、アジアの「弱さ」が罪なのだ、と主張するので
ある。(82p)
引用4:ここにある「日本の満蒙領有は……中国人自身の幸福であ
る」という発想は、帝国主義者あるいは植民地主義者に典
型的なものだろう。(108p9
引用5:石原莞爾という情熱的な革命的ロマン主義者で天才的な戦
略家なしには、「満州国」が大陸にうみだされることはな
かった。122p
引用6:スチムソン(=アメリカ)は、ここに至って、日本が1928
年の「不戦条約」および1922年の「支那ニ関スル九カ国条
約」という国際法を破った、と明らかに通告したのである。161p
引用7:その意味で、二・二六事件の発端はこのロンドン(海軍軍
縮)条約をめぐる統帥権干犯問題にあった、ということも
できよう。181p
引用8:いいかえると、政治家はすべからく国民の生活とそれによ
って生まれるエトス(生活感情)を捉えた政治をおこなわ
ねばならない。208p
引用9:ランケのいわゆる「大なる列強の一」になった日本は、当
然、「世界に面して立つ」日本の原理を確立せねばならな
い。242p
引用10:わかりやすくいうと、天皇制とは、日本という“田舎も
のの誇り”であり、だからこそ時代とともに変わりゆく国
家の法律や制度や宗教といった権力的な機構と無縁に生き
残るだろう、と肯定されたのである。252p
引用11:「日本史」が直接「世界史」に関わる、という事態が出
来していた。258p