山水路考

本の記録です。

「開国」とは、国内ルールを棄てて国際ルールで生きていくと決めること? 『日本の失敗』松本健一

8月。戦時中に生まれてたらぜったい軍国少女になってただろうなーと思います。
田辺聖子さんのエッセイを読んで、ハッとしたことがあります。

ようやく読んだ松本健一さんの本、終章近くに坂口安吾が出てきます。
法隆寺とか桂離宮に日本の美が宿っているのではない。
生きよ、堕ちよ。
「道徳」や「正義」こそがもっとも激烈な戦争を生む。

 

 

『日本の失敗』松本健一岩波現代文庫


引用1:アメリカがヨーロッパによって文明国とよばれるようにな
    ったのは、一八九八年(明治三十一年)の米西戦争に勝ち、
    スペイン領だったフィリピン、グアム、プエルトリコを獲
    得したときのことだった。

引用2:日本がヨーロッパによって文明国とよばれるようになった
    のも、一九〇四-〇五年(明治三十七年―三十八年)の日
    露戦争に辛うじて勝ち、南樺太を獲得し、韓国の保護権や
    遼東の租借権を手に入れてからだった。

引用3:むしろ、そのヨーロッパの力(帝国主義)のまえに屈服し
    てしまう、アジアの「弱さ」が罪なのだ、と主張するので
    ある。(82p)

引用4:ここにある「日本の満蒙領有は……中国人自身の幸福であ
    る」という発想は、帝国主義者あるいは植民地主義者に典
    型的なものだろう。(108p9

引用5:石原莞爾という情熱的な革命的ロマン主義者で天才的な戦
    略家なしには、「満州国」が大陸にうみだされることはな
    かった。122p

引用6:スチムソン(=アメリカ)は、ここに至って、日本が1928
    年の「不戦条約」および1922年の「支那ニ関スル九カ国条
    約」という国際法を破った、と明らかに通告したのである。161p

引用7:その意味で、二・二六事件の発端はこのロンドン(海軍軍
    縮)条約をめぐる統帥権干犯問題にあった、ということも
    できよう。181p

引用8:いいかえると、政治家はすべからく国民の生活とそれによ
    って生まれるエトス(生活感情)を捉えた政治をおこなわ
    ねばならない。208p

引用9:ランケのいわゆる「大なる列強の一」になった日本は、当
    然、「世界に面して立つ」日本の原理を確立せねばならな
    い。242p

引用10:わかりやすくいうと、天皇制とは、日本という“田舎も
    のの誇り”であり、だからこそ時代とともに変わりゆく国
    家の法律や制度や宗教といった権力的な機構と無縁に生き
    残るだろう、と肯定されたのである。252p

引用11:「日本史」が直接「世界史」に関わる、という事態が出
    来していた。258p