ちびた箒立つ秋の一つ星/多読記(2)
長男の星座撮影につきあって夜9時半ごろ、小学校の北門前の少し暗いところへ行く。「つる座もある!」 撮る範囲を決めるのがむずかしいみずがめ座も無事、撮れたらしい。
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今日読んだ本は、『扇島歳時記1』(高浜寛、リイド社)。
舞台は慶応2(1866)年の長崎・出島。まだほとんどの人は江戸幕府が倒れるとは思っていない。それでも居留する外国人は増え続け、異国の文化の「風」は否応なく吹きこんでくる。それは日本人が望んだことでもあった。
廓生まれの主人公の「たまを」のキャラクターが何よりすがすがしくてあたたかい。周りの人だけでなく読者をも照らす。長崎の言葉。出島の景色、阿蘭陀正月の料理、外国人商人たちの館の様子など、どのコマも見逃せない。
「去年は何も考えんでできたのに…世の中色々知ると大変でおす」
たまをは、大人にならなくていいと周りの人に言われながらも月日の流れるのはとめられない。
人は異質なモノ、ヒトを嫌いながらも、惹かれる。境界を守りたい気持ちで、境界を出ていきたい気持ちがせめぎ合う。当時、守るのは「善」で、出ていくのは「悪」とされていただろうが、どちらも人の本性なのだ。それにしてもなんて素敵な装丁なのだろう。