野沢菜の塩漬け長し冬隣り/多読記(10)
野沢菜のシンプルな塩漬けを買う。
パックから出して切ろうとしたら、50センチ以上あった。
こんなに長いんだ。
長野県産。畑にあったころの野沢菜にひととき思いを馳せる。
長男は野菜に興味があるので「おお! 小松菜とかよりずっと長いな」と一緒に驚いてくれる。
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今日は読書が進まなかったが、
イシスの堀江さんのコラムがアップされていて、高野文子のことをあれこれ思いだす。
高野文子を手に取ったのは10代の終わり。数えきれないほど読んでも飽きなかった。
7冊、どれも甲乙つけがたいけれど、あえて選ぶなら、『棒がいっぽん』だ。
背中をおしてくれるわけでもないし、何かを教えてくれるわけではない。
他にない「レミニッセンス」があるからかなと最近、ようやく思い至る。
言葉にしえない「あの瞬間」の再現。
前を歩いている小さな女の子がふりむいてあっかんべーをした、そんな瞬間が人生で確かにあった気がする。なんでもないコトは時の流れに押し流されていくばかりなのだけれど、高野文子の漫画を読んだ時にだけ再現される。必要だけれども読まなければ起こりにくい。平気で置いていけそうで、その実、絶対に置いていっちゃいけない「面影の再生」なのである。